2010年12月26日日曜日

【23年度税制改正】定率法の償却率改正について

 23年度の税制改正では、平成19年に変更されたばかりの定率法の償却率について再改正が入る見込みとなりました。
 具体的な改正内容は大綱を抜粋すると以下のようになります。

② 減価償却制度について、平成 23 年4月1日以後に取得をする減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(現行 2.5倍した数)とします。なお、改定償却率及び保証率についても所要の整備を行います(所得税についても同様とします。)。
(注1)定率法を採用している法人が、平成23 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産の取得をした場合には、現行の償却率による定率法により償却することができる経過措置を講じます。(中略)
(注2)現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産について、平成 23 年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、その償却率を改正後の償却率に変更した場合においても当初の耐用年数で償却を終了することができる経過措置を講じます。

というわけで、今回の改正は耐用年数自体に影響はありません。あくまで償却率の改正です

<現在の規定>
 まず、現在の規定から見ていくことにしましょう。
 平成19年度の税制改正により、現在定率法は2種類存在しています。条文上では「旧定率法」と「定率法」と呼ばれていますが、ここでは便宜上「定率法」を「現定率法」とし、今回の改正で導入されるものを「新定率法」と区別します。
 旧定率法は耐用年数が終わった後の価値を10%と見積もり、毎期の残高に同じ率を乗じて減価償却費を計算する方法でした。たとえば取得価額が100万円で耐用年数が6年なら、0.319という数値が与えられており、
  1年目 1,000,000円×0.319=319,000円
  2年目 (1,000,000円-319,000円)×0.319=217,239円
というように償却率をだんだん下げていって耐用年数が終わった段階で10%が残るようになっていました。
 現在でも平成19年3月31日以前に取得したものは現定率法でなく旧定率法で償却しなければいけません。

 それに対して平成19年4月1日以後に取得したものについては現定率法を適用することになります。
 旧定率法では、耐用年数が終わっても価値があることを前提として計算されていました。しかし、この年の改正で定額法も定率法もその価値を0として見る旨の改正が行われたため、定率(上記の例でいう0.319)を変える必要がありました。
 しかし、一定の率を乗じて数年後に0円をする率を設けるのは理論上不可能なため、おおむね旧定率法と同じような曲線を描くように、定額法の償却率の250%の率を用いることとされました。
 たとえば耐用年数6年なら定額法の償却率は0.167のため、これを2.5倍した0.417を用います。
  1年目 1,000,000万円×0.417=417,000円
  2年目 (1,000,000円-417,000円)×0.417=243,111円
  3年目 (583,000円-243,111円)×0.417=141,733円
  4年目 (339,889円-141,733円)×0.417=82,631円
 ここで、このまま償却を続けていくと、6年目には0円になりません。これに対処するため、定率法の償却額が「残りの価額÷残りの期間」を下回る場合には、そこから先は定額で償却していこう、ということになっています。
  5年目 (1) (198,156円-82,631円)×0.417=48,173円
      (2) (198,156円-82,631円)÷残り2年=57,762円
      (1)<(2)のため、(2)57,762円
  6年目 57,762円
というように計算していくのが現定率法です。

<改正の内容>
 もともと平成19年の税制改正は「耐用年数が終わった後の価値をなくす」だけの内容だったのに、たとえば上記の例でいえば1年目の償却額が約10万円もの開きが出てしまっています。このように、多少償却率が高すぎた感があったのです。
 そこで、定額法の250%で定められていた償却率を、定額法の200%の率に下方修正することにより、旧定率法に近いイメージの償却を行うように改正がされる見込みです。
 以下の推移をみると確かに旧定率法に近い形になっています。
 ただし、実務的には、「旧定率法」「現定率法」「新定率法」の3種類が混在することになり、管理の手間が増えることは否めません。専用ソフトを使っている場合は更新の必要があり、Excelなどで管理している場合には算式の手直しが必要になるでしょう。

<改正の附則>
 この改正は原則として「平成23年4月1日以後に取得した固定資産」から適用されます。したがって、原則だけならば、3月決算法人以外は期の途中で改正による影響が出ることになります。
 そこで出てくるのが(注1)の附則です。この附則により、あくまで実際の適用は平成23年4月1日以後最初に開始する事業年度に取得したものからになると思われます。
 そしてもう1つの(注2)は、おそらく償却方法が3つに分かれる事務の煩雑化の対策として、現定率法を新定率法に変えて償却しても問題はないようにするものだと思われます。もともと「旧定率法→現定率法」は償却率のアップだったために移行は認められませんでしたが、「現定率法→新定率法」は償却率のダウンですので移行が認められるのだと思います。そこで、移行した場合でも大原則である耐用年数経過後は0円を守るために作られた附則でしょう。実際にどのような内容になるかは3月末まで分かりません。

今月の納期限情報(2010.12)

12月31日に納期限を迎える主な税金は以下のとおりです。

・10月決算法人の法人税/都道府県民税/市町村民税/事業税(地方法人特別税) /事業所税/消費税
・4月決算法人の上記の税の中間申告
・7月/1月決算法人が消費税の「3月中間申告」をしている場合のその中間申告

・固定資産税[第3期](堺市の場合)

年末なので余裕を持った納税を!

2010年12月22日水曜日

【23年度税制改正】給与所得控除額の改正について

 23年度の税制改正大綱には、給与収入から一定額を控除できる給与所得控除額についての改正がありました。
これについて詳しく見ていきます。

<給与所得控除とは?>
 給与所得控除とは、個人が給与収入を受け取った場合に、税金計算上、その金額から無条件で控除できる金額のことです。「サラリーマンの必要経費」とも言われます。
 個人事業を行っている人は売上高から必要経費を差し引くことができるのに対し、サラリーマンは給与収入から何も引くものがないのは不平等だ、という意見から規定されています。
 具体的には、その年1年間の収入に応じて、次のように定められています。

【現状の規定】
   給与収入額           控 除 額
    0円~ 180万円 … 収入額の40%(ただし最低65万円)
  180万円~ 360万円 … 収入額の30%に 18万円を加えた金額
  360万円~ 660万円 … 収入額の20%に 54万円を加えた金額
  660万円~1000万円 … 収入額の10%に120万円を加えた金額
 1000万円~     … 収入額の 5%に170万円を加えた金額


 このように、給与収入額が高くなるに応じて、だんだんと控除率は減っていきますが、基本的に青天井で控除額は増えていく形になります。
 たとえば給与収入額が5000万円の場合には、5000万円×5%+170万円=420万円を控除できることとなります。逆にいえば、5000万円から420万円を控除した4580万円が給与所得となるわけです。

<改正の内容>
 平成23年度の税制改正でこの規定は改正される見込みです。
 どのように変わるかといえば、控除できる額に上限が設定されます。給与収入額が1500万円を超える場合、給与所得控除額は一律に245万円で固定されます。
 さらに、給与の受取人が役員等である場合には、給与収入額が2000万円以上になると、今度は逆に給与所得控除額がだんだん下がっていきます。これは、昨年の税制改正で削除された「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」の規定の形を変えた復活版と言えなくもないですが、こちらのほうが税負担額は少なくなると思われます。
 詳しく言えば、以下のとおりの改正内容になります。

【改正の内容】
   給与収入額           控 除 額
 (全 員)
 1500万円~     … 245万円
 (役員等の場合)
 1500万円~2000万円 … 245万円
 2000万円~2500万円 … 245万円-(収入額-2000万円)×12%
 2500万円~3500万円 … 185万円
 3500万円~4000万円 … 185万円-(収入額-3500万円)×12%
 4000万円~     … 125万円


 図であらわすと次のとおりになります。

 そして、他に所得がなく、基礎控除以外の所得控除もない場合、所得税と住民税を合わせた増税額は次のとおりです。


 もともと、1年間の収入額が1500万円を超えない限り、この改正は問題ないのですが、逆に1500万円を超える人は実効税率もそれなりに高い人が多いため、数十万円の増税になる場合も珍しくないと思われます。
 どうせ給与所得控除額が増えないのなら、同族会社なら配当金で受け取った方が有利になるかもしれません。給与が多い方については検討する余地はあるかと思います。

 なお、ここからは余談ですが、今回の改正の「役員等」には、法人税法上の役員のほか、国会議員・地方議員・一定の公務員も含まれます。法人税法上の役員とは、取締役などの登記上の役員のほか、それ以外でも会社の経営に従事しているいわゆる「みなし役員」も含まれますので注意してください。
 また、実際にかかった「サラリーマンの必要経費」が給与所得控除額を超える場合に適用できた「特定支出控除」も改正の見込みです。今までより適用はしやすくはなりましたが、それでも証明が必要なこと等厳しいものですので、適用にあたっては充分注意が必要です。

 最後に適用時期ですが、平成24年分以後の所得税について適用されますので、確定申告する場合には平成25年3月申告分からの適用になります。

2010年12月17日金曜日

税制改正大綱決定

 政府は16日、平成23年度の税制改正大綱を決定しました。
 法人税率の引き下げや相続税の増税など、目玉として言われていたところはおおむね反映されているようですが、一方で租税特別措置法への切り込みや地球温暖化対策税などはいまいちな部分もありそうな内容です。

 細かい点はこちらにまとめを用意しました。
 どこよりも早い改正情報まとめだと思います。

 実務に影響の出そうな部分を順に見ていきますと。

<上場株式等の配当・譲渡>
 これは数年前から散々言われているもので、上場株式の配当や譲渡について10%の軽減税率が適用されているものです。去年の段階では20%の本則に戻すという流れだったのですが、結局もう2年延長することになったようです。その分、準備されていた非課税口座(100万円までの元本に対する譲渡所得を非課税とする措置)は2年先送りになりました。

<FX所得>
 現在、東証の「くりっく365」大証の「大証FX」以外のFXは、各社との相対取引になっているため、雑所得でも特例が適用されず、最大50%(住民税含む)の累進課税かつ、損益通算はできませんでした。
 しかしこれらについても20%の税率で課税することや、3年間の繰越控除が可能となるため、たとえば「ある年はマイナス、翌年にプラス」になった場合に、きちんと申告をしていれば通算することができるようになります。
 このことは数年前から言われていたことで、FXを行う人にとっては朗報になると思います。

<長崎年金問題>
 以前このブログでもお伝えしたとおりですが、長崎年金問題では「更正の請求ができる期間」と「更正の請求ができない期間」の両方が存在していました。
 このうち、「更正の請求ができない期間」に対応するのが今回の改正です。
 なお、該当者には各保険会社から連絡がいったようですので、このブログでは取り上げませんでしたが、「更正の請求ができる期間」の計算方法などは既に公表されています。また、早い場合にはその期限も今年12月末の場合がありますので、年金型の死亡保険金を受け取った記憶のある方はもう一度確認してみてください。

<定率法の償却率>
 実務家にとっては面倒な改正がこれです。
 平成19年に減価償却が一新され、それ以前に取得した「旧定率法」と、それ以後に取得した「(新)定率法」の2種類に分かれました。この(新)定率法は償却率として「定額法の償却率の2.5倍」だったのですが、これを「定額法の償却率の2倍」に変更するのが今回の改正です。
 よって今後は「旧定率法」「(新)定率法」「(最新)定率法」の3種類が混在することになり、それぞれに数表が存在しますので取得日によってそれぞれをキチンと振り分けないといけないことになります。

<課税庁が更正できる期間>
 現状の税務調査では悪質なものがない限り、調査年度は3期分となる場合が多いです。これは例えば4年前のものに修正点が見つかったとしても、更正の期限が過ぎているため更正できなかったためです。
 しかし今回、この期間が5年に延長されることにより、今後の調査では調査年度として5年間指定される場合が増えるような気がします。もし3年で書類を破棄されている方がいましたら、この機会にぜひ7年間まで保存するように変更してください。
 テレビでは「更正の請求の期間が延びた」の方を言うことが多かったですが、同時に課税庁側が更正してくる期間もこうして延びてますので、充分注意が必要です。

<消費税の免税事業者の判定>
 消費税を納める義務があるかないかは、2年前の課税売上高を基準にします。この趣旨は「期首の段階で今年消費税を納める必要があるかないかを分かっているようにするため」ですが、今回の改正はこれを逆手に取り、「じゃあ上半期で課税の基準に達してるなら翌年の期首には普通分かってるでしょ?」という観点で創設されました。
 具体的に事業年度が1年の場合には、最初の6か月での課税売上高が1,000万円を超えた場合、その次の期から課税事業者となります。今までより1年早くなりますのでその分増税になります。
 たとえば法人成りで1年目からそれなりの売上高がある場合には、2期目から課税事業者となってしまうため、最初の事業年度を7か月以内にするなどの対策を講じるという手もあります。


 もちろん、まだ「大綱」なのでこのまま決定するかどうかは分かりません。が、例年どおりならばほぼこのまま成立するはずですので、税金対策の場合にはこれらを考慮に入れて、最新の税法に沿ったものを考えていくことになります。