具体的な改正内容は大綱を抜粋すると以下のようになります。
② 減価償却制度について、平成 23 年4月1日以後に取得をする減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(現行 2.5倍した数)とします。なお、改定償却率及び保証率についても所要の整備を行います(所得税についても同様とします。)。
(注1)定率法を採用している法人が、平成23 年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産の取得をした場合には、現行の償却率による定率法により償却することができる経過措置を講じます。(中略)
(注2)現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産について、平成 23 年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、その償却率を改正後の償却率に変更した場合においても当初の耐用年数で償却を終了することができる経過措置を講じます。
というわけで、今回の改正は耐用年数自体に影響はありません。あくまで償却率の改正です。
<現在の規定>
まず、現在の規定から見ていくことにしましょう。
平成19年度の税制改正により、現在定率法は2種類存在しています。条文上では「旧定率法」と「定率法」と呼ばれていますが、ここでは便宜上「定率法」を「現定率法」とし、今回の改正で導入されるものを「新定率法」と区別します。
旧定率法は耐用年数が終わった後の価値を10%と見積もり、毎期の残高に同じ率を乗じて減価償却費を計算する方法でした。たとえば取得価額が100万円で耐用年数が6年なら、0.319という数値が与えられており、
1年目 1,000,000円×0.319=319,000円
2年目 (1,000,000円-319,000円)×0.319=217,239円
というように償却率をだんだん下げていって耐用年数が終わった段階で10%が残るようになっていました。
現在でも平成19年3月31日以前に取得したものは現定率法でなく旧定率法で償却しなければいけません。
それに対して平成19年4月1日以後に取得したものについては現定率法を適用することになります。
旧定率法では、耐用年数が終わっても価値があることを前提として計算されていました。しかし、この年の改正で定額法も定率法もその価値を0として見る旨の改正が行われたため、定率(上記の例でいう0.319)を変える必要がありました。
しかし、一定の率を乗じて数年後に0円をする率を設けるのは理論上不可能なため、おおむね旧定率法と同じような曲線を描くように、定額法の償却率の250%の率を用いることとされました。
たとえば耐用年数6年なら定額法の償却率は0.167のため、これを2.5倍した0.417を用います。
1年目 1,000,000万円×0.417=417,000円
2年目 (1,000,000円-417,000円)×0.417=243,111円
3年目 (583,000円-243,111円)×0.417=141,733円
4年目 (339,889円-141,733円)×0.417=82,631円
ここで、このまま償却を続けていくと、6年目には0円になりません。これに対処するため、定率法の償却額が「残りの価額÷残りの期間」を下回る場合には、そこから先は定額で償却していこう、ということになっています。
5年目 (1) (198,156円-82,631円)×0.417=48,173円
(2) (198,156円-82,631円)÷残り2年=57,762円
(1)<(2)のため、(2)57,762円
6年目 57,762円
というように計算していくのが現定率法です。
<改正の内容>
もともと平成19年の税制改正は「耐用年数が終わった後の価値をなくす」だけの内容だったのに、たとえば上記の例でいえば1年目の償却額が約10万円もの開きが出てしまっています。このように、多少償却率が高すぎた感があったのです。
そこで、定額法の250%で定められていた償却率を、定額法の200%の率に下方修正することにより、旧定率法に近いイメージの償却を行うように改正がされる見込みです。
以下の推移をみると確かに旧定率法に近い形になっています。
ただし、実務的には、「旧定率法」「現定率法」「新定率法」の3種類が混在することになり、管理の手間が増えることは否めません。専用ソフトを使っている場合は更新の必要があり、Excelなどで管理している場合には算式の手直しが必要になるでしょう。
<改正の附則>
この改正は原則として「平成23年4月1日以後に取得した固定資産」から適用されます。したがって、原則だけならば、3月決算法人以外は期の途中で改正による影響が出ることになります。
そこで出てくるのが(注1)の附則です。この附則により、あくまで実際の適用は平成23年4月1日以後最初に開始する事業年度に取得したものからになると思われます。
そしてもう1つの(注2)は、おそらく償却方法が3つに分かれる事務の煩雑化の対策として、現定率法を新定率法に変えて償却しても問題はないようにするものだと思われます。もともと「旧定率法→現定率法」は償却率のアップだったために移行は認められませんでしたが、「現定率法→新定率法」は償却率のダウンですので移行が認められるのだと思います。そこで、移行した場合でも大原則である耐用年数経過後は0円を守るために作られた附則でしょう。実際にどのような内容になるかは3月末まで分かりません。


